整備管理者とは
整備管理者制度の目的
自動車の安全性の確保と公害を防止するためには、自動車の使用者(ユーザー)は自主的な点検と必要に応じた整備を確実かつ適切に行い、維持管理しなければなりません。
しかしながら、自動車運送事業者等のように、自動車の保有台数が多くなると、自動車の使用者自らが自動車を点検・整備することが困難となる場合が多く、これらを自動車の運転者にまかせることとなり、その結果、自動車の点検・整備が確実に行われないことになりかねません。
整備管理者の制度は、このような問題に対処するため、自動車の使用者が、自動車の点検・整備・管理に関し、一定の要件を備える者を整備管理者として選任し、その者に対して、点検・整備に係る管理に関する権限を付与することにより、責任体制を確立し、もって自動車の安全性の確保と公害防止を図ることを目的とします。
事業の種類 | 自動車の種類 | 整備管理者の選任を要する使用の本拠 |
---|---|---|
事業用 | ●バス 乗車定員11人以上 |
自動車の使用の本拠ごと |
●トラック・ハイタク 乗車定員10人以下 |
5両以上の使用の本拠ごと | |
自家用 | ●バス 乗車定員11人以上 |
●乗車定員30人以上は1両以上の使用の本拠ごと ●乗車定員11人以上20人以下は2両以上の使用の本拠ごと |
●大型トラック等 (車両総重量8トン以上) |
5両以上の使用の本拠ごと | |
レンタカー及び貨物軽自動車運送事業者 | ●バス 乗車定員11人以上 |
自動車の使用の本拠ごと |
●大型トラック等 (車両総重量8トン以上) |
5両以上の使用の本拠ごと | |
●その他の自動車 乗車定員10人以下 車両総重量8トン未満 |
10両以上の使用の本拠ごと |
整備管理者の資格要件
整備管理者は、自動車の点検整備等自動車の管理に関する業務を的確に処理する必要があることから、自動車の安全性等を確保するための整備技術、自動車の管理能力等の一定の資格要件を備えていなければなりません。
整備管理者の権限
選任された整備管理者の使命は、いうまでもなく、自動車の点検整備を確実に行うことにより、公害の防止、輸送の安全を確保するとともに、自動車を適切に管理することにより経済的な運行を図り、事業の健全な発展に寄与することです。
このため、自動車の使用者は、整備管理者が職務を的確に遂行できる体制を整備し、その職務を遂行するうえで必要となる権限を与えなければなりません。具体的には法令に次のように規定されています。
なお、整備管理者は自動車の使用者から与えられた権限に基づき、整備管理規程を定めこれに従い業務を実施しなければなりません。
整備管理者の責任
整備管理者は、自動車の使用者から「自動車の点検・整備及び自動車車庫の管理」に関する事項を処理するため必要な権限が与えられ、これらの職務の執行責任者として業務を実施するわけですから、仮に整備管理者が職務を怠り自動車の点検整備に係る事故が発生した場合は、整備管理者が直接的に責任を負うことになります。
なお、自動車の使用者は、整備管理者を選任した後においても常に整備管理者の職務及び自動車の点検整備が適切に実施されるよう注意と監督をすべき責任があります。
また、地方運輸局長は、整備管理者が道路運送車両法等に違反した場合には、自動車の使用者に対して整備管理者の解任を命ずることができるようになっています。
このようなことから、整備管理者は、職務の重要性と自己の責務を十分認識し、その職務を的確に遂行する必要があります。
整備管理者の業務
(1)整備管理者の業務
整備管理者の業務は、法第50条第1項の規定において「自動車の点検及び整備に並びに自動車車庫の管理に関する事項の処理」とされ、同条第2項の規定に基づく車両法施行規則第32条において、その権限が与えられています。
具体的には、
- ①日常点検について、その実施方法を定め、それを実施すること又は運転者等に実施させること。
- ②日常点検の実施結果に基づき、自動車の運行の可否を決定すること。
- ③定期点検について、その実施方法を定め、それを実施すること。(整備工場へ依頼する場合を含む(4)及び(5)も同じ。)
- ④日常点検及び定期点検以外の随時必要な点検について、これを実施すること。
- ⑤日常点検、定期点検又は随時必要な点検の結果から判断して、必要な整備を実施すること。
- ⑥定期点検又は前号の必要な整備の実施計画を定めること。
- ⑦点検整備記録簿その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること。
- ⑧自動車車庫を管理すること。
- ⑨上記に掲げる業務を処理するため、運転者及び整備要員を指導監督すること。
(2)日常点検整備
事業用自動車等の使用者又は自動車を運行する者は、日々の自動車の安全を確保するため、1日1回、その運行の開始前において、また、自家用乗用自動車等は、自動車の走行距離、運行時の状態から判断した適切な時期に国土交通省令で定める技術上の基準(自動車点検基準)により、日常点検をしなければなりません。
整備管理者は、運転者等に対し、点検箇所、点検方法、点検結果の判定について十分な教育を行う必要があります。
また、整備管理者は、運行を開始する前に運転者等に対し日常点検表等をもとに点検を実施させ、その結果を報告させる等により自動車の状態を確認し、運行が可能かどうか決定しなければなりません。
なお、不具合箇所が報告されたときは、その状態を修復させるための整備を行った後に運行させますが、その際、運行の中止等が生じますので、運行管理者(配車係等)との連携が必要です。
(3)定期点検整備
自動車は、運行することによって各部品・装置に衝撃を受け、材質の疲労による損傷、締め付け部のゆるみ、取り付け部に脱落等が生じ、また、経年変化による部材の劣化等がすすみ、その状態が変化します。
このまま放置すると、部材の劣化等に伴う事故、路上故障の発生が危惧され、車両故障の内容によっては、重大事故となるおそれもあります。
特に、高速道路における高速走行時の車両故障は、重大事故となる危険性を秘めており、また、道路上での立ち往生は、他の交通の障害となるばかりか、二次災害的事故を誘発する原因ともなります。
定期点検整備は、このようなことを防ぐため、使用過程における自動車を一定の期間毎に点検整備を行うように点検を実施する箇所及び内容が法令に示されています。また、自動車運送事業者の場合には、事業の形態により自動車の使用状態が異なるので、旅客自動車運送事業運輸規程(以下「運輸規程」という。)及び貨物自動車運送事業輸送安全規則(以下「安全規則」という。)において、走行距離等の使用条件を考慮して点検基準を作成し、これに基づき点検・整備を確実に実施しなければならないことが定められています。
また、定期点検整備を実施したときは、点検の年月日、点検の結果等を点検整備記録簿に記載し、これを1年間保存しなければなりません。