
事業者は、事業用自動車の運行の安全を確保するに当たっては、運転者、運行管理者を確保する他、適切な勤務時間及び乗務時間を設定し、運行管理の担当役員等運行管理に関する指揮命令系統を明確にしなければなりません。
また、車庫が営業所に併設できない場合には、車庫と営業所が常時密接な連絡をとれる体制を整備するとともに、点呼等が確実に実施される体制を確立しなければなりません。
さらに、事故防止についての教育及び指導体制、事故報告体制等の整備を行うとともに、運行管理の指揮命令系統の明確化等運行管理の体制の整備を行わなければなりません。
事業用自動車の車両数(被けん引車を除く) | 運行管理者数 |
---|---|
29両まで(運行車+運行車以外) | 1人 |
30両~59両(運行車+運行車以外) | 2人 |
60両~89両(運行車+運行車以外) | 3人 |
90両~119両(運行車+運行車以外) | 4人 |
120両~149両(運行車+運行車以外) | 5人 |
150両~179両(運行車+運行車以外) | 6人 |
180両~209両(運行車+運行車以外) | 7人 |
210両~239両(運行車+運行車以外) | 8人 |
運行管理者は事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を事業者と一体となって遂行する職務を担う必要があることから、安全の確保に関する業務を遂行するために十分な管理者数が必要であるとともに、専門知識、経験が要求されることになります。
こうしたことから、事業者は、営業所毎に、配置車両数に応じた数以上の運行管理者を選任しなければならないとともに、複数の運行管理者を有する営業所にあっては、統括運行管理者を選任しなければなりません。また、運行管理者を選任及び解任した場合には、遅滞なく(注:遅くとも1週間以内)に国土交通大臣にその旨を届け出なければなりません。
運行管理者が行う運行管理業務は、営業所における事業用自動車の運行の安全を確保する上で必要不可欠な業務です。このため、事業者は運行管理者にその業務の遂行に必要な権限を与えなければなりません。
これに対し、権限が与えられた運行管理者は、トラック事業法、同法の関係法令及び車両数が300両以上保有する事業者が作成する安全管理規程に規定する内容を遵守し、運転者による事故や酒気帯び運転、酒酔い運転、無免許運転等の悪質違反を防止するよう、その職務を行わなければなりません。
さらに、事業者は、運行管理者に職務遂行上の権限を与えていることから、運行管理者からの助言を尊重しなければならないとともに、運転者やその他の従業員も運行管理者の指導には従わなければなりません。
事業者は、運行管理者又は統括運行管理者が的確かつ円滑に事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行うために、運行管理者の職務や権限、統括運行管理者に係る組織、職務及び選任方法等並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の処理基準等を定めた運行管理規程を作成しなければなりません。
運行管理規程の作成にあたっては、少なくとも運行管理者及び統括運行管理者が当該業務を行うに足りる権限を規定し、個々の事業者が自社の実態を十分考慮して、実施すべき業務等を加え、運行管理の実施に支障が生じないようにしなければなりません。
事業者は運行管理者に対して安全規則に規定されている運行管理者の業務の適確な処理及び自社で定めた運行管理規程の遵守について適切な指導監督をしなければなりません。
事業者は事業用自動車を営業所毎に5両以上配置しなければなりません。ただし、霊きゅう運送、一般廃棄物運送、一般的に需要の少ないと認められる島しょ(ほかの地域と橋梁による連絡が不可能なもの)の地域における事業については、5両以上に拘束されません。
また、計画する事業用自動車にけん引車、被けん引車を含む場合には、けん引車と被けん引車を合わせて1両と計算します。
事業者は、原則として、営業所に併設して車庫を設置しなければなりません。また、営業所に併設できない場合にあっても、運行管理が十分できるように車庫を設置しなければなりません。さらに、車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50㎝以上確保され、車両数すべてを収容できるものであること、使用権限を有すること等事業を運営するにあたり適切に車庫を設置しなければなりません。
1人の運行管理者が毎日24時間勤務をしていることが現実的に不可能であるため、営業所内で一定の能力を有する者を補助者としてあらかじめ選任し、運行管理者の指揮監督の下、営業所における運行管理が完全に実施される必要があります。 補助者が運行管理業務を行うに当たっては、運行管理者が実施すべき運行管理業務のうち補助的な行為については運行管理者の指示の下、補助者に実施させることができる一方、輸送の安全の確保のために重要な行為については運行管理者自らが実施しなければなりません。 運行管理者が実施できる業務のうち、点呼に関しては、原則として運行管理者が実施しなければならないものの、一部は補助者が実施することが可能です(少なくとも運行管理者が3分の1を実施しなければなりません。)。 また、運行指示書及び運行表については、運行指示書及び運行表の計画立案は運行管理者自ら作成しなければなりませんが、資料作成や運転者への伝達行為については補助者が実施することが可能です。 事業者が補助者を選任する場合には、以下の点に留意して下さい。
補助者を選任した場合は、運行管理者の業務の一部を補助させるうえで、その地位と職務権限を運行管理規程などに明確に規定しなければなりません。
補助者の数については、運行管理業務を円滑に行うことができるよう業務の量などを十分に考慮した数である必要があります。
運行管理者は、運転者や自動車が安全に運行できる状態がどうかを確認するとともに、安全運行のために必要な指示を与え、報告を聴取するため、対面により点呼を行わなければなりません。車庫が営業所と離れている場合や、早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合にも対面による点呼が必要ですが、営業所から遠隔地において乗務が開始又は終了するため、乗務開始前点呼又は乗務終了後点呼を当該運転者が所属する営業所において対面で実施できない場合等には、運行管理者は、電話、業務無線等運転者と直接対話できる方法で点呼することができます。また、運転者が所属する営業所以外の当該事業者の営業所で乗務を開始又は終了する場合には、より一層の安全を確保する観点から、当該営業所において、当該運転者の疾病、疲労、飲酒等の状況を可能な限り対面で確認することが望ましいです。
運行管理者は、過労乗務の防止、過積載による運送の防止等運行の適正化を図るため、運転者の日常の乗務を把握しなければなりません。そのため、運行管理者は、運転者に当該乗務を行った以下の内容を記録させ、1年間保存しなければなりません。
また、運行管理者は、運転者毎に記録させることに代え、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第48条の2第2項の規定に適合する運行記録計(以下「運行記録計」という。)により記録することができますが、この場合には、運行管理者は、当該記録すべき事項のうち運行記録計により記録された事項以外の事項を運転者ごとに運行記録計により記録された乗務記録に付記させなければなりません。
運転者の運行の実態や車両の運行の実態を分析し、秩序ある運行の確保に活用するため、
に係る運転に関わる事業者の運行管理者は、事業用自動車の運転者が乗務した場合における瞬間速度、運行距離及び運行時間を運行記録計により記録し、かつ、その記録を1年間保存しなければなりません。
また、運行管理者は、当該記録を解析し、運行管理に活用するとともに、運行記録計により記録することのできない事業用自動車を運行の用に供さないようにしなければなりません。
一般貨物自動車運送事業等は、営業区域規制が廃止されたことにより、長時間にわたり所属営業所に戻らずに運行を行うことが可能となったため、行き先で帰り荷を獲得する等により、当初の運行計画を変更する可能性が大きく、運行経路や運行の安全の確保上必要な事項について運行管理者から運転者へ確実に伝達されない可能性があります。
このため、運行管理者は、乗務開始前及び乗務終了後の点呼のいずれも対面で行うことができない場合には、運行毎に
を記載した運行指示書を作成して、運転者に確実に伝達されるよう指示するとともに、当該指示書を携行させなければなりません。また、運行指示書は運行終了の日から1年間保存しなければなりません。
運行中に、上記(1)又は(3)に変更が生じたときは、運行管理者は、変更の内容を運行指示書の写しに記載し、運転者に電話等により適切な指示を行うとともに、運転者が携行している運行指示書に変更内容を記載させなければなりません。この場合には、運転者に対して、指示を行った日時及び運行管理者の氏名についても運行指示書及びその写しに記載しなければなりません。
また、運行指示書の作成及び携行が必要でない運行の途中で、乗務開始前及び乗務終了後のいずれの点呼も対面で実施できない乗務を行わせることとなったときは、運行管理者は、運行指示書を作成し、運転者に電話等により適切な指示を行わなければなりません。この場合において、運行管理者は運行指示書に指示の内容、日時及び運行管理者の氏名を記載し、また、運転者は乗務等の記録に同様の記載をしなければなりません。
自動車運送事業の運転者は、営業所を一度離れると運行中の安全の確保が運転者にほとんど全て委ねられていること、また、道路上を自家用車、歩行者等と混在して走行するため、運転者に特に高い安全意識と能力が求められます。さらに、多様な地理的、気象的状況の下で運転するとともに、大型の自動車を運転することから、道路の状況その他の運行の状況に関する判断及びその状況における運転について、高度な能力が要求されます。こうしたことから、事業者において輸送の安全性を向上させるために「安全教育」を積極的に実施する必要があります。
運行管理者は、乗務員に対して継続的かつ計画的に指導及び監督を行い、トラック事業法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項に関する知識や、運行の安全を確保するために必要な技能及び知識の習得を通して、他の乗務員の模範となるべき乗務員を育成しなければなりません。
また、運行管理者は、死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした運転者、新たに雇い入れた運転者及び65歳以上の高齢の運転者に対して、事業用自動車の運行の安全の確保のために遵守すべき事項について指導するとともに、国土交通大臣が認定する適性診断(注:機構その他の機関が実施する特定診断、初任診断及び適齢診断)を受けさせなければなりません。
さらに、運行管理者は運転者教育を実施した場合は、その内容を教育実績として運転者台帳に記録するなどして、教育効果の把握に努めなければなりません。
なお、運転者以外の乗務員に対する教育訓練も運転者教育と同様に計画的に実施しなければなりません。
事故を起こした運転者は、被害者の救護を行うとともに速やかに警察及び会社に報告し、運行管理者の指示に従うとともに、運行管理者は、適切に運転者に指示を与える等速やかに適切な処置を取らなければなりません。
事業者は、事業用自動車の転覆、火災等の重大な事故(※)を引き起こしたときは、事故発生日から30日以内に、当該事故毎に自動車事故報告書3通を、事故を起こした自動車の使用の本拠を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長を経由して国土交通大臣に報告しなければなりません。
事業者は、転覆、転落、火災又は踏切における鉄道車両との衝突・接触のいずれかに該当する事故で、死者若しくは重傷者を生じたとき又は物質の飛散若しくは漏えいを引き起こしたとき等は、事故報告書の提出のほかに、電話等により、24時間以内にその事故の概要について、事故を引き起こした自動車の使用の本拠を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長に速報しなければなりません。
運行管理者は、事業用自動車に係る事故が発生した場合には、
を記録し、その記録を当該事業用自動車の運行を管理する営業所において3年間保存しなければなりません。
事故の記録として、事故の状況、発生原因等を的確かつ具体的に記録することで、同種事故の再発など、事故防止に役立ちます。また、運行管理者は、事故発時点において推定される直接的原因のみならず事故の要因と認められるものを正確に把握し、諸々の要因について総合的に事故原因を究明することに努める必要があります。
類似の事故で被害の著しく大きい事故が発生するおそれがあると判断したとき、又は地理的、季節的条件等の誘因により事故が頻発するおそれがある場合において、国土交通大臣又は地方運輸局長より事故警報が発令されたときには、運行管理者は、これらの事故警報に定められた事故防止対策に基づいて、運行の安全を確保するため、従業員に対して周知し、指導監督を行わなければなりません。
運行管理者は、天災、異常気象及び土砂崩壊、路肩軟弱等の路線障害等により輸送の安全の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、状況を的確に把握し、乗務員に対して暴風警報等の伝達、運行の中止、迂回、徐行運転、待避所の指定、旅客等の保護方法等を適切に指示しなければなりません。
自動車が故障その他の原因で踏切内や高速道路上に立ち往生してしまった場合に、他の交通に対して迅速に非常事態の発生を知らせるため、自動車には、道路運送車両の保安基準により、非常信号用具の備え付けが義務付けられています。また、事業者は、非常の際に迅速かつ確実に非常信号用具を扱えるよう乗務員に使い方を実践体験させ、熟知させなければなりません。
過積載の運行により、貨物自動車の制御能力の低下やバランスを崩しやすくなり、重大事故の原因になるとともに、車両自体の使用年数を縮め、車両コストの増大や燃費の低下につながります。
このため、事業者は、会社として、事業用自動車の最大積載量を超える積載をすることとなる運送を引き受けないようにする必要があります。
また、運行管理者は、過積載による運送を前提とする事業用自動車の運行計画を作成しないようにし、運転者その他の従業員に対して過積載の防止に関する適切な指導及び監督を怠らないようにしなければなりません。
貨物自動車の積載状況によっては、貨物自動車のバランスを崩し、重大事故が生じる可能性があります。
このため、運行管理者は、偏荷重が生じないように積載し、また、運搬中に荷崩れ等により事業用自動車から荷物が落下することを防止するため、貨物にロープを掛けること等の必要な措置を講ずるよう従業員に指導しなければなりません。