
運送事業を経営するには、事業に使用する営業所、休憩施設、睡眠施設(必要に応じて保管施設)及び車庫を確保する必要があります。
これら必要となる施設に関しては、細かな許可基準が定められています。
これが運送事業の許可申請が複雑である理由の一つです。
この点を確認するためには、現場確認はもちろんのこと、土地の登記簿謄本や公図の調査、営業所を管轄する市町村役場の土地計画法や建築基準法などを担当する部署への確認、住宅地図やインターネット地図を利用した周辺地域の確認が必要です。
都市計画法に抵触しているか否かは、市町村役場の都市計画課等で確認が必要です。
基本的に、建築物が市街化区域内にあり、以下の用途地域に該当しないことが要件となります。
市町村役場の建築課等で確認が必要です。
具体的には、営業所とする建物建築物が、現在の建築基準法、消防法等に抵触していな必要があります。
市町村役場の農政課、農業委員会等で確認が必要です。営業所所在地の地目が田や畑の場合はそのままでは許可が下りません。
農地転用後でなければ許可がなされませんし、場所によっては農地転用自体が難しい場合もあります。
仮に農地転用を行うとしても、転用の許可を取得するまで1か月~6か月ほど必要となりますので、事業計画自体が変わってくる場合もあります。
申請者が、営業所とする建物を使用する法的権限があることを証明する必要があります。
権限がなければ当然建物などを使用できませんし、許可もされません。
土地・建物を購入して営業所を建築する場合や申請者所有の住居等を営業所として使用する場合です。この場合は建物登記簿謄本や土地登記簿謄本で、自己所有であることを証明します。
法人などでは代表者個人所有、という場合もあるでしょう。この場合は個人と法人との貸借関係になります。
賃貸借の場合はまず契約期間と契約の更新方法に注意が必要です。
適切な使用権限がある賃貸借物件と言えるためには、少なくとも契約期間は1年以上、かつ期間満了後は自動更新である旨の定めがあることが必要です。
また、使用目的も重要です。「居住用」ではそもそも事務所としては使用できません。
営業所の広さに関しては、何㎡以上というような制限はありません。
しかしながら、事務机や椅子、キャビネット、電話、ファックスなど、運送業の事務を行うために必要な什器備品類が備え付けられる広さがなければ、営業所として認められません。
例えば、事務作業をすることは実質的に不可能な事務所などでは、営業所として許可が下りません。
営業所と車庫が併設できない場合は、2点間の距離が直線距離で10㎞圏内(地域により5㎞圏内)にあることが必要です。
これは営業所の要件と同じ考え方です。
広さの制限はありませんが、運転者が十分休憩を取るのに必要な机や椅子を備え付けるられる広さが必要です。
基本的な営業所と同じ考え方ですが、それに加えて、運転者1人あたり2.5㎡以上の広さが必要です。
なお、睡眠施設の設置は必須ではありませんが、運転者が自宅に帰って寝ると8時間以上の休息が取れないような運行がある場合等は、睡眠施設の設置が必要です。
休憩施設と睡眠施設は同じ場所でも問題ありません。その場合、ベッドや布団等が置ける広さの確保が必要です。
営業所と休憩施設・睡眠施設を1つの部屋に設ける場合は、パーティションなどで区切る必要もあります。
「車庫」というと屋根のある建物をイメージしますが、必ずしもそうである必要はなく、更地でも全く問題ありません。その場合は市街化調整区域であっても認められる可能性もあります。
車庫は、例えば事業用自動車がトレーラーがメインである場合等は相当広い敷地が必要ですし、以下のように交通安全上支障がない場所であることも必要です。(地域により基準が異なる場合があります)